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要求開発超入門

要求開発超入門 Vol.6 要求開発とは何か

要求は在るものではなく、開発するものである

ここまで説明してきましたように、言味のない要求を排除して、価値のあるシステム開発を行うためには、まずはビジネスの視点でシステムの要求を捉える必要があります。 そのために必要とされる考え方が要求開発です。
要求開発では、「要求は在るものではなく、開発するものである。」と唱えられています。つまりは、ビジネスの視点から業務のあるべき姿や、問題課題を捉え、その中からシステム要求を作り出すことが大切なのです。
要求開発は、『要求開発アライアンス』という団体によって考え方が提唱され、普及活動が積極的に進められています。
僕も要求開発アライアンスの理事を務めています。

要求開発

要求開発は、ここまでにお話ししてきた下記のようなビジネスの中でITを活用する際に生じる問題を解決するために、考え出されたものです。

Vol.1
失敗するシステム開発
ビジネスの視点でIT企画・開発を行っていない
Vol.2
うまくいかない要求定義
要求はユーザが持っている、という勘違い
Vol.3
うまくいかない業務の"見える化"
業務の見える化手法とプロセスが末成熟
Vol.4
ビジネス価値を創出できないシステム
ビジネスとITが切れてしまっている
Vol.5
元気のないエンジニア
エンジニアリングがビジネスの価値を向上させていない

米国Standishグループの調査によれば、システムに作りこんだ機能のうち、結果として利用されているのは36%だということです。これは言い換えると3分の2のシステムが「役に立たない」ということにもなります(Standish Group Study Report in 2000 Chaos Report)。このような「大いなる無駄」を排するためにも「正しい」要求にもとづくシステム開発が必要となるのです。
要求開発は、システム企画の段階からRFP(Request for Proposal)の作成まで、一貫して「目的と手段の連鎖」を"見える化"していくプロセスです。これにより、ステークホルダー間の合意をとりながら、企業経営への貢献という最終的な目的を実現させるためのシステム開発を推進していきます。
要求開発の基本的な考え方は、新規システム開発を行う前に、しっかりと新規ビジネスの姿を考えようということなのです。

図1 36%しか使われていない?

図1

要求開発アライアンスの活動

要求開発アライアンスは、要求開発の開発と普及を行う非営利団体です。要求開発アライアンスは、要求開発の理事からの紹介さえあれば、無償で会員になれます。
会員は既に300人を超えています。要求開発アライアンスでは、毎月定例会(セミナー形式)と反省会(飲み会)がセットとなっており、定例会には毎月、30〜40人のメンバーが参加し、学びと情報交換を楽しく行っています。
僕も、定例会のセミナーで方法論の話や要求開発でのコンサルティングについて度々お話ししています。

要求開発宣言

要求開発宣言とは、要求開発アライアンスの創設メンバーたちが合宿を行って、要求開発という考え方を実施していく際にもっとも大切にしている考えを、要求開発アライアンスの宣言としてまとめたものです。これを読むと、要求開発では何を大切しているか判ると思います。

Openthology 要求開発宣言 - 私たちは、企業でのITシステム開発を通じて、「要求」に関して以下のことを学んだ。
  • 情報システムに対する要求は、あらかじめ存在しているものではなく、ビジネス価値にもとづいて「開発」されるべきものである。
  • 情報システムは、それ単体ではなく、人間の業務活動と相互作用する一体化した業務プロセスとしてデザインされ、全体でビジネス価値の向上を目的とするべきである。
  • 情報システムの存在意義は、ビジネス価値の定義から要求開発を経てシステム開発にいたる目的・手段連鎖の追跡可能性によって説明可能である。
  • ビジネス価値を満たす要求は、直接・間接にその価値に関わるステークホルダー間の合意形成を通じてのみ創り出される。
  • 要求の開発は、命令統制によらず参加協調による継続的改善プロセスを指向すべきである。
  • 「ビジネスをモデルとして可視化する」ということが、合意形成、追跡可能性、説明可能性、および継続的改善にとって、決定的に重要である。

私たちはこれらの気づきから、「要求開発」という新しい知的活動分野を創造し、それをみずから実践していく。その過程で獲得したナレッジをOpenthology(オープンソロジー)として体系化し、かつ、クリエイティブコモンズの下に公開・共有することで、同様の課題を持っている人々と、コミュニティ活動を通じて分かち合うことを決意する。

2004年12月23日 すずかけ台合宿にて

いかがですか、ちょっぴり難しいように思われたかもしれませんが、読めば読むほど味がある文章となっていますね。
この要求開発宣言は、要求開発のフィロソフィーとして大切にしているものなのです。
ちなみに、この要求開発宣言の前には、実はラクーア宣言というものがありました。これも非常にユニークなものなのですが、内容は秘密とされています。ぜひ一度要求開発アライアンスに参加して、我々理事に聞いてみてくださいね。

要求開発の活動

要求開発は、下記の図のようにシステム開発の前段階において、ビジネス戦略やビジネスプロセスの企画の見える化を行いながら、IT要求に落とし込んでいくという活動(プロジェクトの)のことを言います。

図2 要求開発段階のイメージ

図2
* 拡大画像を見る

要求開発方法論

要求開発方法論とは、要求開発を学習・実践したりする人たちに向けて開発された方法論のことです。
方法論?まあ難しく考えずにとりあえずは、考え方の解説書と思っていてください。
要求開発方法論は、別名Openthology(オープンなメソドロジイという意味の造語)と呼ばれています。
要求開発方法論については、次章で説明しますね。

コタツモデル

要求開発には、コタツモデルという重要なメタファがあります。
コタツモデルとは、みんなコタツに入って、次のビジネスをじっくりと話し合い、そこに必要とされるビジネスの要求やシステムの要求を考えていきましょうということを示す象徴として使われています。
さて、コタツに入るのは誰でしょうか?
それは、「トップ]「業務担当者」「IT担当者」の方々です。
ここでは、「トップ」のことを図3のような「Hagi社長」といった具体的な人とは考えず、トップの役割を持つ人と考えてください。つまりは、トップ、業務、ITそれぞれのミッションと、知恵を持った人を集めるのです。
要求開発は、このコタツの中で要求が開発されることを大切にします。
それは、なぜでしょうか?
その訳は、要求には、ビジネス要求、システム要求などがありますが、経営的判断からトップダウン的に生まれる要求もあれば、業務現場の問題課題から生まれる要求もあり、IT活用という観点から生まれる要求もあるのです。それらの全体像を捉えるために、それぞれの専門知識を結集し、その中で戦略・業務オペレーション・IT活用を"見える化"することが重要となるため、それぞれの担当を呼んでまずはコタツに入れるというわけです。

コタツモデルは要求開発においては、もっとも大切にしたい考えなのです。

いままでのビジネス企画からシステム開発の流れの中には、定期的に会議は開催されるものの、やり方も確立されないまま、声の大きい人が中心となって進んでしまい、企画が曖昧のまま、いつのまにかシステム開発の方針が唱えられ、業務改善・改革などについては、ほとんど話がなされないということも多いと思います。

僕も、お客様の所で要求開発を支援する際に、要求開発方法論は調味料のようなもの、まずはコタツモデルを形成することが大切なのですと説明しています。

図3 コタツモデル

図3
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