

「自分でやったほうが早い」。AIとの共生が必須となるこの時代において、そう考える現場が少なくないのもまた事実です。リコーITソリューションズでは、AIコーディングアシスタント「GitHub Copilot」を全開発者へ配布しましたが、そこには「これまでの常識」という根強い意識の壁がありました。現場の意識をいかに変え、次世代の開発プロセスへと踏み出すのか。組織が挑む変革の現在地に迫ります。
2025年9月、RITSは希望者約570名に対し、AIコーディングアシスタント「GitHub Copilot」を一斉配布するという大きな一歩を踏み出しました。しかし、システム上の全体利用率は95%以上達しているものの、実態としては、毎日欠かさずAIを活用している層が約50%いる一方で、残りの層は2~3日に1回思い出したように使うにとどまったり、最初に少し触れただけで使わなくなってしまったりと、定着度において明確な二極化が存在したのです。
その背景には、これまでの開発の常識を根本から覆す大転換への戸惑いがありました。AIにどう依頼をすべきかを整理する手間を惜しみ、「自分でやったほうが早い」と自ら手を動かしてしまうケースが散見されたのです。しかし、AIに任せられる業務を個人が抱え込んでしまうことは、結果として組織全体の生産性を停滞させてしまいます。
RITSでは、AIによって開発の在り方が劇的に変わるという大転換に、全社でついていく決断を下しました。新しい技術に敏感な一部の社員だけが使いこなす段階を終え、使っていない社員の意識をどのように変えていくか。この課題に向き合うことから、私たちの取り組みは始まっています。
利用率の二極化を打破するためにまず取り組んだのは、利用実績データの可視化でした。全社に約50名の推進キーマンを配置し、現場から変革を促す体制を整えました。さらに、誰がどれくらい使っているかという利用実績のデータを取得して、部署ごとに可視化。活発な部署を緑、停滞している部署を赤で表示して全社に公開し、組織としての透明性を高めました。客観的な利用状況を開示することで、現場での主体的な利用を促しています。同時に、技術的な「つまずき」を徹底的に排除する教育も並行しました。「使い方がわからない」という言い訳をなくすため、ツールのインストール手順という、本来ならエンジニアには不要とも思える初歩中の初歩から解説した動画を作成。誰もが迷わずスタートラインに立てる環境を、徹底的に整えました。また、コーディングに直接関わらない業務でも使えるよう、メール文面の推敲や設計図画像の解釈といった身近な活用例も提供し、一部の部署・職種に留まらない全社的な取り組みの幅を広げています。
他にも、現場への働きかけは多岐にわたります。大型プロジェクトの担当者には、外部企業によるセミナーを実施して、プロジェクトへの本格的なAI導入を推進。さらに、各部署の利用実績データから現場の状況を読み取り、利用を促すための取り組みを毎週欠かさず実施しています。
活用が進む現場では、具体的な変化が起きています。10年以上稼働するシステムのプログラミング言語のバージョンアップ案件では、AIをフル活用して工数を想定の3分の2に短縮した例や、見積もり前にAIへ要望を伝えただけで完成したケース、1日に1万行のコードを生成した事例も出ています。さらに、出張先で撮影した大量の写真を渡すだけで一括でイベントレポートが作成できるなど、開発にとどまらない多様な活用も生まれています。
その一方で、活用が進んだからこそ見えてきた課題も明確になりました。当然ながら、AIが事実に基づかない回答を出す場合があるため、出力の正しさを判断する部分に人間が時間と労力を割く必要があるのです。作業をAIに任せるからこそ、品質を見極める人間の目利きが強く求められています。この見極めこそが人間の入る価値であり、AIが生成した出力が正しいかどうかの判断を下すことが、今後人間が果たすべき重要な役割となります。

詳細旅程タイムライン
私たちは今、自ら手を動かす作業者から、AIという部下を指揮するマネージャーへの転換期に立っています。かつて若手エンジニアは、先輩の背中を見て基礎を学ぶのが一般的でした。しかし、基礎的な作業をAIが肩代わりする現在、新人はキャリアのスタートと同時に「AIが出した答えの正否をジャッジする」という高度な役割を突きつけられることになります。RITSは今、こうした新たな役割を担える人材を育てるべく、教育と組織の在り方を根本から作り替えている最中です。
全員に判断が求められるこの過酷な状況を、私たちは組織が進化する絶好の機会と捉えています。目指しているのは、単なるツールの導入ではありません。AIを前提とした「新しい開発文化」そのものの創造です。
開発プロセスを根底から変革し、そこで創出した余力を、市場や顧客に対する「新たな価値の提示」へシフトさせていく。この一連のサイクルを回せる人材を輩出することこそが、RITSが挑む変革のゴールです。
デジタルサービス&プロダクツ事業本部
B2Bプロダクト事業センター 第1開発部
伊藤 武司
IT ソリューション事業本部
デジタルマーケティングセンター 技術支援室
吉川 浩
「RICOH IT SOLUTIONS WEB MAGAZINE」は
現場で生まれる挑戦や創造のストーリーを通じて
ITがもたらす新たな価値の流れをわかりやすくお届けする
リコーITソリューションズのWebマガジンです
お問い合わせ:リンク
発行:リコーITソリューションズ株式会社
マーケティング本部 デジタルマーケティングセンター
マーケティング推進室 コーポレートコミュニケーショングループ